2025年10月24日

H&Iグローバルリサーチ（株）

*****「電子用硝酸の世界市場：種類別（EL用、VL用、UL用、SL用）（2025～2030）」産業調査レポートを販売開始 *****

H&Iグローバルリサーチ株式会社（本社：東京都中央区）は、この度、Grand View Research社が調査・発行した「電子用硝酸の世界市場：種類別（EL用、VL用、UL用、SL用）（2025～2030）」市場調査レポートの販売を開始しました。電子用硝酸の世界市場規模、市場動向、市場予測、関連企業情報などが含まれています。

***** 調査レポートの概要 *****

1. 市場の全体像と成長ドライバー

電子用硝酸（Electronic Grade Nitric Acid）は、半導体、フラットパネルディスプレイ、光電子デバイスなど、超高純度化学品が求められる分野において不可欠な材料である。本市場は近年、半導体製造の微細化、回路集積度の向上、そして化学機能材料への需要増加に伴い、急速に拡大している。

2024年時点における世界市場規模は約3億4,000万米ドル前後と推定され、2033年には6億米ドルを超える水準に達すると予測されている。予測期間（2025～2033年）の年平均成長率（CAGR）は**6〜8％**と見込まれ、特にアジア太平洋地域が市場成長の中心となっている。

この成長を牽引する主要要因は次の通りである：

• 半導体産業の拡大：AI、IoT、自動車用半導体、データセンター向けメモリの需要が急増しており、それに伴い超高純度硝酸の洗浄用途が増加している。
• 製造工程の微細化進行：10nm以下のノード製造では、金属不純物除去性能の高い化学薬品が必要とされ、電子グレード硝酸の品質要件がより厳格になっている。
• 環境・安全規制の強化：各国で化学品の環境規制が厳格化する中、高純度・低残渣・高安全性を兼ね備えた電子用硝酸の採用が進んでいる。
• ディスプレイ・フォトニクス分野での採用拡大：OLEDやマイクロLEDなどの次世代ディスプレイ製造プロセスにおいても、高純度酸による表面洗浄・エッチング工程が必須化している。

一方、電子用硝酸市場の成長を抑制する要因として、製造コストの高さ、設備投資負担、原材料（アンモニア、酸素等）の価格変動リスクが指摘されている。また、硝酸自体の強酸性や腐食性により、保管・輸送・安全管理コストも無視できない。

総じて、電子産業の継続的な技術革新とクリーンルーム化学品需要の高まりが、今後10年間における市場拡大を強固に支えると見られている。

2. 主要用途別分析と技術的背景

電子用硝酸は、用途に応じて濃度・純度・粒子レベル・金属不純物濃度が異なるが、大きく次の分野に分類される。

(1) 半導体製造用途

市場の約60％を占める最大セグメントである。主な使用目的は、ウェーハ表面の洗浄、酸化膜形成、金属残渣除去、化学的研磨（CMP）後洗浄などである。
特に、シリコンウェーハおよび化合物半導体（GaAs、SiC、GaNなど）に対する処理薬品としての需要が拡大している。

電子用硝酸の純度レベルは、一般的に99.999％（5N）〜99.9999％（6N）以上が求められる。これにより、金属コンタミネーションを抑制し、微細パターン工程での欠陥率を最小化できる。近年では、超低金属含有（ppb単位）および低TOC（全有機炭素）仕様の製品開発が進んでいる。

(2) フラットパネルディスプレイ（FPD）用途

LCD、OLED、Micro-LEDなどのディスプレイ製造工程において、ITO電極洗浄やガラス基板エッチング用途で利用されている。これらの分野では、ガラスやITO膜の表面処理に硝酸が不可欠であり、特に高透過率・低欠陥を求める製造プロセスにおいて、高純度硝酸が導入されている。

(3) フォトニクス・光電子分野

光通信デバイスやセンサー素子の製造におけるエッチング・表面活性化・金属酸化膜除去に用いられる。特に、光ファイバー用プリフォーム製造やフォトニックチップ加工など、高精度表面制御を要する分野で利用が進む。

(4) その他電子材料用途

バッテリーやコンデンサー電極の製造、微細加工用材料表面洗浄などでも採用されている。特にEV向けバッテリー電極材製造での微細表面制御用途は、新たな需要領域として注目される。

このように、電子用硝酸は「洗浄」「エッチング」「表面処理」など複数の製造プロセスにわたって使用されており、半導体およびディスプレイ分野の技術革新が市場の発展を直接牽引している。

3. 地域別市場動向と供給構造

電子用硝酸市場は、アジア太平洋地域が圧倒的なシェアを占めており、特に日本、韓国、中国、台湾がグローバル生産の中核を担っている。

(1) アジア太平洋地域

世界市場の約70％以上を占める最大地域。
日本と韓国は半導体材料の技術基盤が強く、超高純度硝酸を製造する化学メーカーが集積している。中国では地場企業の増産と輸入依存の減少が進んでおり、近年は「自国半導体製造支援政策（中国製造2025）」の影響で電子用化学品の国産化が加速している。

主要メーカーとしては、東ソー、三菱ケミカル、LG Chem、三井化学、BASF、Honeywellなどが挙げられる。特に日本勢は純度保証技術に優れ、半導体メーカー（TSMC、Samsung、Intelなど）との長期供給契約を維持している。

(2) 北米市場

米国では半導体製造拠点の再構築が進行中であり、「CHIPS法」による国内投資拡大が電子グレード硝酸の需要を押し上げている。アリゾナ、テキサスなどの新設ファブに合わせ、国内供給網の強化が進む。一方、供給の多くを日本・韓国企業の現地法人が担っている。

(3) 欧州市場

欧州では、環境規制や化学品法（REACH）への適合が厳しく、電子用硝酸の生産量は限定的。主要用途は光電子・MEMS・センサー分野であり、ドイツ・フランスなどで高付加価値用途が中心となる。

(4) その他地域

中東・東欧・東南アジアでは、半導体製造の新拠点が形成されつつあり、今後の潜在的需要が見込まれる。特にインドは半導体産業育成政策により、電子化学品市場の新興地として注目を集めている。

供給面では、電子グレード硝酸の製造には極めて高い精製技術が要求されるため、参入障壁が高い。グローバルで実質的に10社程度の主要企業が市場の大部分を占める寡占構造となっている。

4. 技術革新と製造プロセスの進化

電子用硝酸は通常、アンモニア酸化法（オストワルト法）によって製造され、その後、蒸留・精製・ろ過・脱ガスなどの多段階工程を経て高純度化される。

近年の技術動向として、

• メタルコンタミネーションの超低減化（ppb以下）
• トータル有機炭素（TOC）の削減
• 半導体グレード用サブナノ粒子除去技術
• オゾン酸化併用による不純物分解プロセス
  などが挙げられる。

さらに、AI制御によるリアルタイム純度モニタリングや、自動化されたクリーン充填ラインの導入も進んでいる。これにより、製造の安定性とトレーサビリティが飛躍的に向上している。

また、環境対応型製造プロセスも注目されており、排ガス中のNOx再利用、再生可能エネルギーを利用した硝酸合成など、カーボンニュートラル型の製造が一部企業で実用化され始めている。

5. 市場の課題と展望

電子用硝酸市場は、安定した成長基調を維持しているが、いくつかの課題も存在する。

主な課題

• コスト構造の硬直性：高純度化に必要な設備投資と維持コストが大きく、価格競争を制限している。
• 安全管理リスク：高濃度硝酸の腐食性・爆発性により、保管・輸送インフラが制約を受ける。
• 環境負荷：排出ガス中の窒素酸化物（NOx）管理が厳しく、対応技術の導入が必須。
• 地域偏在：アジア依存の供給構造が続いており、地政学リスクがサプライチェーンを不安定化させる。

成長展望

これらの課題を乗り越える形で、今後の成長は次の方向に進むと予測される：

1. 高純度・高機能化の加速：7N以上の超高純度製品開発、微粒子管理技術の高度化。
2. 地域多様化：北米・インドでの新規生産拠点の増設。
3. 環境対応型製造への転換：NOx回収装置、クローズドループ型製造プロセスの普及。
4. 新興用途の開拓：量子デバイス、フォトニクス、マイクロバッテリー製造など新分野への展開。

6. まとめ

電子用硝酸市場は、**「高純度」「安全性」「環境適合性」**を三本柱として進化している。半導体やディスプレイ製造の最先端化に伴い、微細化と清浄度要求が年々高まる中で、この市場は素材産業の中でも戦略的重要性を増している。

アジアを中心とした生産集積と、北米・欧州での供給多様化戦略が並行して進むことで、今後10年間、電子用硝酸は電子化学品市場の中核分野として成長を続けると予測される。

***** 調査レポートの目次(一部抜粋) *****

第1章　調査概要

1.1　目的・調査範囲
1.2　対象地域と市場セグメント（種類別・用途別）
1.3　調査手法・データ収集方法
1.4　市場定義・分類基準
1.5　分析モデルと前提条件

第2章　エグゼクティブサマリー

2.1　市場ハイライト（2024基準値・2030予測値）
2.2　成長要因・制約要因の要約
2.3　製品別・用途別・地域別の主要トレンド
2.4　今後の展望

第3章　市場ダイナミクス

3.1　市場ドライバー（電子機器需要、半導体微細化、太陽エネルギー分野拡大）
3.2　市場課題（安全性・環境規制・高コスト構造）
3.3　市場機会（新興国電子産業・次世代ディスプレイ技術）
3.4　業界動向・技術革新・政策的支援

第4章　製品タイプ別分析

4.1　ELグレード（高純度・半導体向け）
4.2　VLグレード（高集積IC向け、CAGR5.9%予測）
4.3　ULグレード（ディスプレイ・光電子デバイス用途）
4.4　SLグレード（汎用・低濃度応用）

第5章　用途別分析

5.1　半導体用途（洗浄・エッチング・CMPプロセス）
5.2　太陽エネルギー用途（ウエハーテクスチャリング工程）
5.3　LCDパネル用途（ガラス基板・ITO電極洗浄）
5.4　その他電子部品用途（センサー・光通信デバイス等）

第6章　地域別市場分析

6.1　北米（米国・カナダ・メキシコ）
6.2　欧州（ドイツ・フランス・英国・イタリア・スペイン）
6.3　アジア太平洋（中国・日本・韓国・インド・台湾）
6.4　中南米
6.5　中東・アフリカ

第7章　市場構造と競争環境

7.1　主要企業プロファイル
– 東ソー（Tosoh Corporation）
– 三菱ケミカル（Mitsubishi Chemical）
– LG Chem
– BASF SE
– Honeywell International ほか
7.2　企業戦略分析（技術革新・地域拡張・提携・買収）
7.3　市場集中度とシェア分析
7.4　ポーターの5フォース分析

第8章　技術動向・製造プロセス分析

8.1　製造方法（アンモニア酸化・精製工程）
8.2　超高純度化技術（多段蒸留・メタルコンタミ低減）
8.3　環境対応技術（NOx削減・再利用システム）
8.4　品質管理と検査基準

第9章　価格動向とコスト構造

9.1　原材料価格（アンモニア・酸素）
9.2　製造コスト分析（設備・エネルギー・輸送）
9.3　価格動向と市場影響要因

第10章　規制・環境・安全基準分析

10.1　国際安全基準（GHS・REACH・OSHA）
10.2　環境ガイドライン（排ガス処理・廃液管理）
10.3　輸送・保管安全管理（腐食性物質対応）

第11章　市場予測（2025〜2030年）

11.1　世界市場規模推移（数量・金額ベース）
11.2　製品タイプ別予測
11.3　用途別予測
11.4　地域別予測

第12章　サプライチェーン分析

12.1　原料供給体制
12.2　生産・流通ネットワーク
12.3　顧客・販売チャネル構造

第13章　今後の展望と戦略提言

13.1　成長ドライバーの持続性評価
13.2　新興市場進出戦略
13.3　ESG／サステナビリティ対応戦略
13.4　技術投資・提携推奨アプローチ

第14章　付録

14.1　用語集・略語一覧
14.2　参考文献・データソース
14.3　調査方法詳細
14.4　免責事項

※「電子用硝酸の世界市場：種類別（EL用、VL用、UL用、SL用）（2025～2030）」調査レポートの詳細紹介ページ

⇒https://www.marketreport.jp/electronic-grade-nitric-acid-market

※その他、Grand View Research社調査・発行の市場調査レポート一覧

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